信じてる人なら、誰が考えても、正しい事と正しくない事の標準はハッキリひとつしきゃないわけじゃなくって――? ……どういうの?
治子 ……わからない。私は、私は――(深い、刺すような眼で正面を見る。口のわきがブルブルとひきつっている)
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(その時、この室の、光のあたらない隅のドアにドシンと人がぶつっかる音がして、うすくらがりの中に二人の若い男が入って来る。そちらをすかして見る静代と治子……)
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男の声 ……しかたがないじゃないか。君みたいに、そんな、イキリ立って見たって、どうなるんだよ! わかってる者あ、わかってるんだ。友ちゃんは友ちゃんだし、君は君だ。いいじゃないか。友ちゃんが、そんなふうになったからって、君に責任はないさ。それぐらい、わかってる者はチャンとわかってるよ。しかし、なんしろ、みんな気が立ってるんだ。君を追いかけて表門の方へ行った連中もいるから、すぐに帰ると、また、あぶない。ここでいっとき待っていてから帰ったほうがいいんだ!
明 (かすれた声で)……北村さん、あんたあ、兄さんの友達だね? ね、そうだろう?
北村 そうだよ。だから
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