きれず、次第に顔をふせ、ミクロメータアの上に額をつける)
静代 ……いえ、私、アテツケにこんな事いっているんじゃないの。あなたと友吉さんが親しかったんで、それをアテツケにいってるんじゃないのよ! まるきり、アベコベだわよ。あんたにだからいえるの。そうだわ、ほかの連中なんかに、こんな事いいたくなんかないわ。わかってくれる、治子さん? くれるわね? ……そうなのよ。だからね、友吉さんを憎んでいる人たちの中には……いえ、そりゃ、大部分がワイワイ連中だけどさ、なかには――いえ、そのワイワイ連中の気持の中にだって[#「中にだって」は底本では「中にだつて」]――私と同じような、やっぱりシンケンにあの人を憎まないわけにはいかない人だって[#「人だって」は底本では「人だつて」]いるのよ。……だって[#「だって」は底本では「だつて」]、戦争が善いの悪いのというんだったら、はじまる前にいわなきゃならないんだわ。はじまってしまって、こっちが殺したから、むこうが殺すというように、両方で押せ押せになってやりはじめてしまった後になって、善いの悪いのといってみたって、なんの役に立つの?……
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