(ながい間。……ミクロメータアにうつぶせになっている治子の白いエリアシを静代が見つめている。流れ作業のベルトが、その間にも廻転している音がリズミックにつづいている)
[#ここで字下げ終わり]
女の声 (奥から、いかつく)人見治子さん! 山下静代さん! あんたがた、どうしたの! いまこの工場で、能率をおとすような人は、国賊ですよッ!(静代と治子がピクンとして、――治子は顔をあげて――いそいで仕事をはじめる)われわれ女子挺身隊は、敵をたおすために働いています! われわれの職場は第一線の戦場です! われわれは兵士です! 撃ちてし止まんの覚悟を忘れた人は、日本人ではありません!
静代 ……(だまって、しばらく仕事をつづけた後で、顔を動かさないで、おしころした低い声で)監督さん、まだこっちを見てるわよ。……ごめんなさいね、治子さん。
治子 (これもささやくように)いいのよ、いいのよ。
女の声 われわれは、勝ちます! あくまで勝って勝って、勝ちぬきます! われわれは、われわれの手も足も、血も命も、カンキをもって[#「もって」は底本では「もつて」]国にささげます。カンキをもって[#「もって」は底本で
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