いと思うのよ。……私だって友吉っあんの事を聞いた時には、正直いってトテも腹が立ったわ。あんまり一人がってだと思ったのよ。だって、そうでしょう[#「そうでしょう」は底本では「そうでしよう」]? ……私は、一番上の兄さんは、満洲で戦死したんだし、そいから、イトコにも一人、ビルマで戦死した人がいるの。……そいから、あとしばらくすれば結婚する筈だった――その人も去年応召して南方に行ったんだけど、この半年ばかりタヨリがまるきりない。……もう、たぶん、死んだんじゃないかと思うの。……自分は、日本国民のために、いや、つまり、その日本国民の中には、静代さん、あなたがはいっているんだ、つまりあなたがたのため、命の限り戦って来ます。……そういってニコニコして行ったのよ。忘れないわ、私……あの時の顔を忘れられないの、私。(仕事の手は休めないで、すすり泣く)……それを思うと、石にかじりついたって、私――
治子 ……(涙を流している。仕事の手は休めない)
静代 それを思うと、私、ホントに、腹が立つの。国民全部が、こんだけなにしているのに、自分だけ、そんな事って、あるもんじゃないわ! でしょう?
治子 ……(たえ
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