にか、はじめたらしい。
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(その課長の視線に射すくめられて、義一のシルエットが、だんだんに前こごみに低くなって行く)
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        3

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 同じ工場内の仕上部の一角(クローズ・アップ)管制用の電燈のエンスイ形の光に照らし出された仕上台をはさんで、正面にこちらを向いて、人見勉の妹の治子と、向う向きになって背を見せた、その同僚の静代の二人が、それぞれ、流れ作業の台の上に押し出されて来る小さい長方形の金属ブロックを仕上台に取りつけてあるミクロメータアに当てがって見ては、合格品と不合格品を別々にキチンと積みあげて行っている。動作は器械のように正確にすばやい。正面を向いて明るく照らし出された治子の表情は、どんなに小さい所までもハッキリと見られるが、語っている静代は向う向きの逆光のため、ボンヤリと大きなシルエット。(前場の課長と義一の関係を逆にしたものである)作業のリズムとテンポには無関係な低いトギレトギレの言葉。
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静代 ……だってそうじゃないの、なにも弟さんに責任の有ることじゃないわ。それを、
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