みんなで、よってたかって、迫害するという法はないじゃありませんか。……そりゃ、今、世の中がこんなふうになって、みんなが増産のためにシンケンになっている最中なんだから、そこいもって来て、あんな人があらわれれば、フンガイするのも、もっともじゃあるけど――いえ、私たちだって、こんな毎日夜業までして働いているんですもの、あなたの前だけど、チョット腹が立つわ、正直いって。……だけど、明という人にゃ、責任は有りゃしない。そうじゃなくって? そうでしょう[#「そうでしょう」は底本では「そうでしよう」]、治子さん?
治子 ……ええ。
静代 卑劣だと思うのよ、罪もない人を、おおぜいでイジメるの! 卑怯よ! みんな、卑怯だわ! それも、ホントウにシンから国のためを思って……つまり自分もホントウに国のために命を投げ出してかかっている人が、その事をフンガイするのなら、まだわかるけれど、たいがい、忠君愛国はおれ一人といったふうにノボセあがって良い気持になったり、人のオッポに[#「オッポに」は底本では「オツポに」]附いて、つまり附和雷同ね、そいでワーワーいっているのよ。私知ってるわ。ゲンに此処の工員の人に、ホント
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