伝わっているかも知れんねえ。しかし、君あたしか、郡山――だったね? ――の士族――たしか、そうだったね? そういう家柄から、こんなふうな、とんでもない人間が、どうして出たものか? 明君の下に妹がもう一人居たね、たしか? フム。……まあまあ、なんだなあ、私の方も、よく心がけておくから、君の家でも、まあ、出来るだけ、友吉の事は世間にパッとしないようにして、この、キンシンしてだ。そいじゃまあ、今夜のところは……どうも、御苦労さまでした。……じょさいはないだろうが、今夜のことは私と君の間だけの話として、なんだ……そんなわけで明君の退職の……(そこへ、突然、奥から四、五人の足音がドカドカとあわただしく近づいて来る。お! といって課長が奥を見る)
奥の声 (ドアを三つ四つ叩いて)課長さん! 課長さん! 課長さん!
課長 なんだ、誰だ?
奥の声 旋盤部へ来て下さい。
課長 どうしたんだ?(立つ)
奥の別の声 片倉が、又、あばれているんです。
課長 なんだって?
奥の声 片倉の明ちゃんを、みんなが取り巻いて、この――
課長 よし、すぐに行く――(行きかけて、こちらを振向いて、義一を見る)ね? また、な
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