坐っている。その様子を突伏していた治子が横眼でジッと見ている)
リク ……ああ、ああ。
俊子 ……(ひとりごとのように)ズーッと配給がおくれているから。
友吉 ……(思い決したふうで、ツト立って、左手の棚の上にのせてあった一冊の本を取って出て行きかける)じゃ、チョット、なんか買って来るから――
治子 ……(急いで、ガマグチを出し、有り金を手の上にあけて、それを友吉に渡しながら)これで、あの―― 五円ぽっちじゃ、なんにも買えやしないでしょうけど。
友吉 いいんだ、いいんだ。これを売ってくるから――
治子 バイブルでしょう[#「バイブルでしょう」は底本では「バイブルでしよう」]? ダメだわ、売っちゃ! 友吉さんが、それを――ダメ!
友吉 いいんだ。――(ゲタを突っかける)
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(そこへ、崖の方から、不意に現われたと思うと、恐ろしい敏しょうさで[#「敏しょうさで」は底本では「敏しようさで」]、この家に近づいて来る復員服にジャンパーを着た貴島宗太郎――7に於ける男3――)
[#ここで字下げ終わり]
貴島 (自分の来た方を振返って見てから、スーッと近づいて来て、笑顔)おい、エ
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