くなったね。地金がまるきりヨタなんだ。会社でこさえていても、それ考えるとイヤになるよ。廻っているのがフシギさ。ハハ。(ポケットからガラスビンを出して)そいから、キハツをすこし。
友吉 だけど、そんなに――いいよ。この前のキハツの代もまだ払ってないし。
北村 いいじゃないか。だって、もうないんだろ?
友吉 ないにゃないけど――
北村 じゃ使えよ。修理をやるったって、部品やキハツなしじゃ、やれやしないじゃないか。なにどうせ僕だって買ったもんじゃなし。
友吉 悪いよ、だから。会社の物をそんなに君――困るなあ、僕。
北村 クスネて来たんじゃないんだよ。会社では近頃、請負の方の仕切りが、とても悪くなっているんで、その代りに余分の部品や、キハツのすこしぐらい、部長の責任で、仕切の歩合いとして持ち出していいことになってるんだよ。どうせ一時の事だろうが、そいつを外で売って、そいでしのいで行ってくれというんだね。
友吉 そうかねえ。しかし、それなら尚のこと、僕んとこなぞに廻しちゃ、大した金にはならんのだから――
北村 なに、僕は一人ぐらしだし、なんとかやってるから、大丈夫なんだ。
友吉 ……ありがとう。
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