いうんでね。
友吉 ……そうでしょうか?すると――いえ、実は僕も家族があの、――病人が居たり、弟はああして死んでしまったし、それに僕の手がこんなもんで、ほかの仕事を捜すといってもチョット有りません、暮しが苦しいもんで――又、こっちに使ってもらえないだろうかと思って、先日頼みに来たら、課長さんが、使ってやろうというようにおっしゃってくれたもんですから、実は今日やって来たんです。すると、しかし――
司会 どうりで、人事課に居たんだね? そうかね――しかし、そりゃ君、一方に於て百人以上も首を切ろうとしているなかで、君を採用しようというのは、そいつは、マユツバもんだし、もしそれが事実だとすると、君は一時会社をよして、組合に加入していない人間だから――
声二 なあんだ、なあんだい! スキャップじゃねえか、すると争議やぶりだ!
声一 エスさまあ、おれたちを裏切りにおいでになったんだあ!
友吉 ……(裏切りといわれて、しんけんになり)そんな事はありません!そんな諸君を裏切るなんて、そんな――。僕は、ただ、どうしても暮しが立たないもんだから、なんとかして、この時計の仕事でなんとかしたいと思ったもんだか
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