ました。しかし、どうしても、そう出来なかったんです。ですから、みんなにすまないと思って、心の中で手を合せながら連れて行かれました。しかたがなかったんです。……
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(彼が正直に熱心に語れば語るほど、一同との間がグレハマになって行く。その事に友吉は気が附かない)
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声一 (客席の前部の中から)エヘヘ、ヘ、ヘヘヘ!
声二 (同じく)なあんだい!(この二人の調子は嘲笑――というよりも、ムキになって嘲笑するにもあたいしないものをヒヤカすように)
声三 しかし――(と、これは友吉をかばうように)あん時、みんなで蹴とばしたのは、ホントだからなあ。こんなふうになったからって、おれたちも、よく考えてみなきゃ、いかんと思うんだ。
声一 (ふんがいした激しい調子で)なにを考えるんだい!おれたちは今、ストライキに入ろうとしてるんだよ! ベンベンとして、こんな話を聞いている事あないと思うんだ! 
声三 だけど、おれたちも人間だ。チットは恥を知らなきゃならんと思うんだ。片倉君のどこが悪いんだよ!
声一 悪くはねえよ。エスさまだよ、やっぱし片倉君は! 天にまします!(二
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