そんな君、そんな――そういうふうには、ぼくら、誰一人思っていないんだから――
友吉 いえ、みんなにメイワクがかかる事は、はじめからわかっていたので、召集を受けるまでに会社をやめて置こうと思ってたんですけど、ほかに口がないもんですからグズグズしているうちに、あんなふうになってしまって――諸君があれだけシンケンに国のために働いているのに、それをぼくのために、みんなが国賊だなんていわれたりしたんですから、ぼくの事をみんなが、あんときハイゲキしたのは、とうぜんなんです。弟の明のこともあとで聞いたんですが――私のようなものの弟なんですから――あの、しかたのないことで――どうか、許してください。おわびをします。
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(この言葉と、司会者及び一同の置かれている立場や気分とが、不意に喰いちがって一同シーンとなる。細田だけが注意深く友吉を見ている)
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司会 ……(妙な顔をして)そりゃ君、今となっては、この、なんだよ――世の中が変って、自由な、この、つまり戦争中ぼくらみんながゴマカされたり目かくしをされていたために、なんだ、あんな戦争なのに、それに負けちゃなら
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