で――つまり、あのドロボウ戦争に命がけで反対して来た人として、片倉君はかがやかしい闘士でありまして、そんな人間をわが工場から出したという事は、われわれのほこりであります。(われるような拍手)片倉君、どうぞ! 片倉君!(呼ばれて客席の前部に坐っていた友吉、しかたなく立ちあがるが、モジモジしている)どうぞ!
細田 (興味を引かれ、乗り出してそちらの方を見ながら)……すると、なんなの――その?
司会 ええ、あの、キリスト教なんですよ。そいで――(細田、ホウと口の中でいって、友吉の方を見る)片倉君! さあ、どうぞ、こっちへ!
友吉 でも、ぼくは……
司会 なんでもいいんだ。思った事を、チョットでもいいから、ね!
友吉 べつにその、話すことなど、ないもんで――
司会 えんりょしたまうなよ。ハハ、もとの仲間じゃないか、みんな。(三四人の笑い声。同時に、友吉のうしろから、彼をテーブルの方へ押しあげようとする二三人の手が見える)
細田 (微笑しつつ)どうぞ! どうぞ君!
友吉 ……(しかたなく、テーブルの方へ。きまりわるそうに細田に向っておじぎをしてから、テーブルの向うに立つ。まだ青白く、左の腕はブラ
前へ 次へ
全180ページ中108ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング