うばわれていた方達に心の底から感謝し、今後どうかよろしくお頼みしたいのであります。(さかんな拍手。細田微笑しつつ中腰になり、うなづいて拍手に答える。それを見て、客席の最前部から一人の青年が拍手しながらツト立ちあがる)
青年 あの――かんげいのために、歌を歌います! みんなで歌って下さい。(歌)民衆の旗、赤旗は――(客席前部の大部分の人々が、それにつれて歌い出す。司会者も手でタクトを振りながら歌う。……歌いおわり、全員で拍手)
司会 ええと……それでは、次ぎに――(と背後の黒板を振り返り)片倉友吉君に話をしてもらいます。片倉君のことは、紹介するまでもなくたいがい――特に組立部の者はみんな知ってる。戦争中一年以上、ほとんど二年近くも憲兵隊や警察にいて、終戦になって出て来たのです。さんざんゴウモンを受けて、片手を不具にされたりしても屈しないために、憲兵隊でも警察でも手を焼いてしまって、これをどう処置してよいか伸ばし伸ばしして来て、ついにしかたがないので、軍法会議の方へ廻されることになっていたそうですが、グズグズしているうちに終戦になったといいます。あぶなく命びろいをしたわけです。そういう意味
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