とわきの壁に、タテながの大きな紙に「人民政府をわれらの手で」「反動政府ぶったおせ」「働けるだけ食わせろ」「工場管理はおれたちで」と赤く大書したのがはってある。黒板には、大きい白字で「東亜時計労働組合文化部。時局座談会」と二行に書き、「司会者アイサツ――組合書記局、本山君」「労働組合の任務――細田正邦氏」「感想――片倉友吉君」(――ただし、この一行は、あとで急に書き加えた事が一見してわかるように、大きく※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]入されている)「質問――有志」「閉会アイサツ――委員長」と数行に書いてある。
正面に一人だけ腰かけた細田が、こちらへ話しかけている。顔色が青白く、背広に、伸びかけた頭髪。語調が単純で、くだけた語りくちの中に一種の迫力がある。それまでに既にかなり永く話して来て、ほとんど終わりに近いところ。
[#ここで字下げ終わり]
細田 ――そんなわけで、今度の戦争が、日本の帝国主義者たちによってくわだてられたドロボウ戦争――侵略戦争であったということは、以上の私の話で、よくわかっていただけたろうと思います。(客席から拍手)……で、
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