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明治三十九年十一月十一日(封書)
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今日は早朝から文学論の原稿を見ています。中川という人に依頼した処先生頗る名文をかくものだから少々降参をして愚痴だらだら読んでいます。今四十枚ばかり見た所へ赤い冬瓜《とうがん》のようなものが台所の方から来て驚きました。それに長い手紙があるのでいよいよ驚ろきました。赤冬瓜の事は一、二行であとは自我説文学説だからいよいよ以て驚ろきました。御意見は面白く拝見しました。大分御謙遜のようですがあれはいけません。然し文章について、大意見があるとは甚だ面白い。是非伺いたいと思います。「アン火」は感じがわるいですね。仏蘭西あたりのいか様ものを脊負《しょ》い込んだのでしょう。四方太は白紙文学、僕は堕落文学、君はサボテン文学、三重吉はオイラン憂い式、それぞれ勝手にやればいいのです。それで逢えば滅茶に議論をして喧嘩をすればいいと思う。所が四方太先生は議論をしませんよ。だからいやだ。天下が僕の文をまつは甚だ愉快な御愛嬌で難有く待たれて置いて大に驚ろかす積りで奮発してかきましょう。東洋城のオバサンが「二百十日」をほめたそうだから面白
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