漱石氏と私
高浜虚子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)疎《うと》き
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)子規|居士《こじ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「土へん+朶」、第3水準1−15−42]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)るゐ/\
−−
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序
漱石氏と私との交遊は疎《うと》きがごとくして親しく、親しきが如くして疎きものありたり。その辺を十分に描けば面白かるべきも、本篇は氏の書簡を主なる材料としてただ追憶の一端をしるしたるのみ。氏が文壇に出づるに至れる当時の事情は、ほぼ此の書によりて想察し得可《うべ》し。
大正七年正月七日
[#ここで字下げ終わり]
[#地から5字上げ]ほととぎす発行所にて
[#地から3字上げ]高浜虚子
[#改ページ]
漱石氏と私
一
今私は自分の座右に漱石氏の数十本の手紙を置いて居る。近年はあまり人の手紙
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