な元気はない人だと思っていた。えらい事になりました。僕は「秋晴《しゅうせい》」や「秋曇《しゅうどん》」をかいて満足していられるようになりたい。その方がどの位個人として幸福か知れない。僕がかくのは冗談にかくんじゃない。まずくても下手でも已を得ずかくのである。冗談なら文章をかかずに教師だけでひまがあれば遊んであるいている。小生今後の傾向はまず以て四方太先生の堕落的傾向であります。甚だ厄介ですな。小生が好んで堕落するんじゃない。世の中が小生を強いて堕落せしむるのであるか。恐惶謹言。
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   十一月十一日[#地から3字上げ]金
     虚子先生
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 左千夫の手紙にいっている事は僕にわからない。四方太の駄洒落《だじゃれ》を攻撃している所は小生は駄洒落とは認めない。
 僕はあすこへ応用してもらう積りで文章談をしたのではない。
 あれが駄洒落なら大抵のものは駄洒落だ。然し「秋晴」や「秋曇」は堕落的傾向を帯びないから僕には一向感じがない。何をかいたのか分らない。あのまま白紙を代りにしても同じ事だ。四方太がきいたら定めし怒る事だろう。
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