が来て閉口です。『坊ちゃん』は依然として広告されていますね。どうか正月分は(もし出来たら)この醜態を免がれたいと思う。僕今度は新体詩の妙な奴を作ろうと思う。文界は依然として芋を揉《も》んでいる。そのなかに混って奮闘するのは愉快ですね。皮がむけて肉がただれても愉快だ。僕もし文壇を退けば西都へ行って大学で済まして講義をしています。然し折角生れた甲斐には東京で花々しく打死をしたいですね。
吉原の酉《とり》の市なんか僕も見たかった。二、三日漫然とあるきたい。手紙をかくだけでも随分骨が折れる。以上。
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十一月九日[#地から3字上げ]金
虚子先生
○
明治三十九年十一月十一日(封書)
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拝啓 昨日ちょっと伺うのを忘れましたがね。小生の原稿は十二月二十日頃まででいいでしょうか。そこの所をちょっと確めて置きたい。実は色々用事があってね早くは出来そうもないです。
生田長江《いくたちょうこう》という人が四方太さんの所へ行ったら先生大気焔で漱石も「一夜」をかいているうちはよかったが近頃段々堕落するといったそうだ。四方太先生はこん
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