度も語《ことば》を交せたる事なし。「草枕」の作者の児だけありて非人情極まったもの也。すると今度は妻のおやじが腎臓炎から脳を冒かされたとか何とか申す由。世の中も多忙なものに候。小生も御客の相手で一人を暮らして居る様也。驚いたのは今日女記者の中島氏とか申す人が参られたる事也。この女「猫」を愛読して研究する由。「草枕」でも読んでくれればいいのに。『二六』をすぐ買ってよみました。あの人は面白い考を持って居るがあまり学問のない人と思います。然しよく趣味を解する人であります。今度の『中央公論』に「二百十日」と申す珍物をかきました。よみ直して見たら一向つまらない。二度よみ直したら随分面白かった。どういうものでしょう。君がよんだら何というだろう。またどうぞよんで下さい。さようなら。
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九月十日[#地から3字上げ]金
虚子庵梧下
○
明治三十九年九月十三日(葉書)
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西洋人にはまだ逢わんから逢って椅子《いす》が欲しいかどうか聞いて見ましょう。日本ずきだから坐るというかも知れない。三崎座で「猫」をやる由なるほど今朝の新聞を見たら広
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