ら1字下げ]
 拝啓 御手紙ありがたく候。病人は存外よろしく候。この分にては一命だけはたすかる事と存候。ただ今の処交通遮断なれど好《いい》加減に出たり這入ったり致居り候。寅彦、「嵐」と題する短篇を送りこし候。例の如く筆を使わないうちに余情のある作物に候。十月分の『ホトトギス』に御掲載被下べくや。御郵送申上候。今日『中央公論』の末尾に小生らの作を読者に吹聴する所を観て急に『中央公論』へかくのがいやになり候。何ぼほめられるがいいと申してああいわれて一生懸命に十月号に書いてやろうという気にはなれなく候が如何。今度滝田に逢ったらあまり広告が商売的だと申してやろうと存候。以上。
[#ここで字下げ終わり]
   九月二日夜[#地から3字上げ]金
     虚子庵
      ○
明治三十九年九月十一日(封書)
[#ここから1字下げ]
 拝啓 来る二十六日の能に御招き被下難有奉深謝候。西洋人も定めてよろこぶ事と存候。もっとも通弁を仕るのは少々閉口に候。あの番組のうちで一つも見たものも読んだものもありません。橋口は兄の方ですか弟の方ですか。小児《こども》病気は日にまし快方。小生見舞に参り候えどもまだ一
前へ 次へ
全151ページ中88ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
高浜 虚子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング