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 女皇の葬式は「ハイド」公園にて見物致候。立派なものに候。
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白金に黄金に柩《ひつぎ》寒からず
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 屋根の上などに見物人が沢山居候。妙ですな。
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凩《こがらし》の下にゐろとも吹かぬなり
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 棺の来る時は流石《さすが》に静粛《せいしゅく》なり。
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凩や吹き静まつて喪の車
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 熊の皮の帽を戴くは何という兵隊にや。
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熊の皮の頭布《づきん》ゆゝしき警護かな
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 もう英国もいやになり候。
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吾妹子《わぎもこ》を夢みる春の夜となりぬ
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 当地の芝居は中々立派に候。
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満堂の閻浮檀金《えんぶだごん》や宵の春
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 或詩人の作を読で非常に嬉しかりし時。
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見付たる菫《すみれ》の花や夕明り
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 それから明治三十四年五月、六月と引き続いて『ホトトギス』紙上には「倫敦消息《ろんどんしょうそく
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