りなどしてその結果『春夏秋冬』の中《うち》に収めたものが多いように記憶している。今|生憎《あいにく》手許に『春夏秋冬』がないが、
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累々《るゐ/\》として徳孤ならずの蜜柑《みかん》哉
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という句の如きはその一例であったように記憶する。右の手紙は熊本県飽託郡大仁村四百一番地とある。
次に受取った手紙は同じく三十一年の三月二十一日の日附のものである。
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その後は存外の御無沙汰、平に御海恕|可被下《くださるべく》候。御恵贈の『新俳句』一巻今日学校にて落手、御厚意の段難有奉拝謝候。小生爾来俳境日々退歩、昨今は現に一句も無之《これなく》候。この分にてはやがて鳴雪《めいせつ》老人の跡釜を引き受くることならんと少々寒心の体に有之候。
子規子病気は如何に御座候や、その後これも久しく消息を絶し居り候こととて、とんと様子もわからず候えども、近頃は歌壇にての大気焔に候えばまずまず悪しき方にてはなかるまじと安心いたし居り候。先は右御礼のみ、草々如斯に御座候。頓首。
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三月二十一日[#地から3字上げ]愚陀仏
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