た「豊年も卜《ぼく》すべく、新酒も醸《かも》すべく」などは至極結構と存じ候。凡て近来の俳句一般に上達、巧者に相成候様子に存じ候。『読売』などに時々出るのは不相変《あいかわらず》まずきよう覚え候。まずしといえば小生先頃自身の旧作を検査いたし、そのまずきことに一驚を喫し候。作りし当時は誰しも多少の己惚《うのぼ》れはまぬかる可《べか》らざることながら、小生の如きは全く俳道に未熟のいたすところ実に面目なき次第に候。過日子規より俳書十数巻寄贈し来り候。大抵は読みつくし申候。過日願上候『七部集』及『故人五百題』(活字本)は御面倒ながら御序《おついで》の節御送り願上候。子規子近来の模様如何。此方より手紙を出しても一向返事も寄越さず、多忙か病気か無性《ぶしょう》か、或は三者の合併かと存候。小生僻地に罷在《まかりあり》、楽しみとするところは東京俳友の消息に有之、何卒《なにとぞ》爾後《じご》は時々景気御報知|被下度《くだされたく》候。近什少々御目にかけ候。御暇の節|御正《ごせい》願上候。小生蔵書印を近刻いたし候。これまた御覧に入れ候。頓首。
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十二月五日[#地から3字上げ]漱
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