らいにて、日本書はふるい漢文か詩集のようなもの、然らざれば外国の小六《こむ》ずかしきものを手に致し候。それがため文海の動静には不案内に候。その方却ってうれしく候。新聞も実は見たくなき気持致候。草々頓首。
[#ここで字下げ終わり]
   十一月二十一日[#地から3字上げ]金之助
     虚子様
      ○
大正二年六月十日(封書)
[#ここから1字下げ]
 啓。「相模のちり」御採用被下候由にて難有存候。あれは未知の人なれど折角故ただ小生の寸志にてしか取計いたるまでに候。紹介様のもの御入用の由故わずかばかり認め申候。近頃一向御目にかからず、健康も時々御違和の由承り居候えども、疾に御全快の事とのみ存居候いしに、いまだに御粥《おかゆ》と玉子にて御凌ぎは定めて御難渋の事と御察し申上候。それではひとの病気処にては無之、御見舞状を受けて却って痛み入る次第に候。『ホトトギス』は漸次御発展の由これまた恭賀。小生も何か差上度所存だけはとうから有之候えども身体やら心やらその他色々の事情のためつい故人に疎遠に相成るようの傾《かたむき》、甚だ無申訳候。四十を越し候と人間も碌な事には出合わず、ただこうしたい
前へ 次へ
全151ページ中135ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
高浜 虚子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング