虚子様
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 子供の名を伸六とつけました。申《さる》の年に人間が生れたから伸で六番目だから六に候。この間の旦《あした》は取消故併せて御吹聴に及候。
『ホトトギス』は広く同人の小説を掲載すると同時に大いに同人間の論客を御養成如何にや。
 楽堂《がくどう》の舞踏談など面白く候。
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      ○
明治四十三年十一月二十一日(麹町区内幸町胃腸病院ヨリ)(封書)
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 拝啓 その後は御無沙汰に打過候。修善寺にては御見舞をうけ難有候。なお入院中の事とて御礼にもまかり出ず失礼致居候。
 別封|宮寛《みやかん》と申す男より参り候。中に大兄に関する事も有之候故入御覧候。この人は昔の高等学校生にて不治の病気のため廃学致候ものなる事御覧の如くに候。かかる人の書いたものを『ホトトギス』へでも載せてやったら嬉しがるだろうと思いかたがた入御覧候。文中小生の事のみ多く自分よりいえば夫が憚《はばかり》に候。文字は別段の光彩も無之内容もそれほどには見え不申、ただ普通のものよりは幾分か新しき事あらんかと存候。
 右用事まで申上候。当節は小説も雑誌もき
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