出来るだけかいて見ましょう。時があれば傑作にして御覧に入れるがそうも行くまい。廿一日の朝には全部渡さなくてはいけませんか。ちょっときかして下さい。正月発行期日が後れても職人が働かないから同じ事でしょうか。
 僕の家主が東京へ転任するに就て僕に出ろという。甚だ厄介である。今時分転任せんでもの事であるのにと思う。然し向《むこう》は所有権があるから出なければならない。君どうですか、いい所を知りませんか。あったら移りたいから教えて下さい。あれば今年中に移ってしまう。頓首。
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   十二月九日夜[#地から3字上げ]夏目金之助
     虚子先生座下
      ○
明治三十九年十二月十一日(封書)
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「正義組」拝見趣向はいいですがあれでは物足りませんね。あれをもっとキュッと感じさせなくっては短篇の生命がありません。悪口を申して失礼です。こんなものは今の小説家がみんなやります。而してもっとうまくやります。これよりは写生文の方がよいように思われます。然し屑籠へ入れる必要はないでしょう。寺田が短篇をよこしました。これもあまり感服しません。然し他人はほめるか
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