動、草木号叫。女蝸《じょか》氏未だこの足を断じ去って、五色の石を作らず。(十四日)
▲芭蕉が奥羽行脚の時に尾花沢という出羽の山奥に宿を乞うて馬小屋の隣にようよう一夜の夢を結んだ事があるそうだ。ころしも夏であったので、
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蚤《のみ》虱《しらみ》馬のしとする枕許
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という一句を得て形見とした。しかし芭蕉はそれほど臭気に辟易《へきえき》はしなかったろうと覚える。
▼上野の動物園にいって見ると(今は知らぬが)前には虎の檻《おり》の前などに来るともの珍らし気に江戸児のちゃきちゃきなどが立留って見て鼻をつまみながら、くせえくせえなどと悪口をいって居る、その後へ来た青毛布《あおげっと》のじいさんなどは一向匂いなにかは平気な様子でただ虎のでけえのに驚いている。(十五日)
▼芳菲山人《ほうひさんじん》より来書。(十七日)
拝啓昨今御病床六尺の記二、三寸に過《すぎ》ず頗《すこぶ》る不穏に存候間《ぞんじそうろうあいだ》御見舞申上候|達磨《だるま》儀も盆頃より引籠り縄鉢巻《なわはちまき》にて筧《かけひ》の滝に荒行中|御無音致候《ごぶいんいたしそうろう》。
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