山には人物なきか。熱心家なきか。貴兄を扶助する人一人もなきは御気の毒と申外之無候。またなげかわしき事に存候。
     (中略)
 万里の外に在って小生独り気をもむ処御|憫察《びんさつ》可被下候。
 年末は小生一年間最多忙の時期殊にこの両三日は一生懸命に働いても働ききれぬほどに御座候。しかし『ほととぎす』の事も忘れ難く、貴兄に弱音を吐かれてはいよいよ心細く相成申候。呵々《かか》。
 貴兄御困難のことも大方推量致し居候えども何卒《なにとぞ》出来るだけの御奮発願上候。
     (下略)
   十二月十八日

    極堂詞伯
[#ここで字下げ終わり]

 居士の例の執着はここにも頭をもたげて来て、容易に極堂君をして『ホトトギス』から手を引かさしめなかった。そこで極堂君は翌年の夏頃までとにかく続刊して来たのであったが、それが三十一年の十月から余の手に渡って東京に移さるることになったのである。『ホトトギス』が余の手に渡ってから居士と余との関係はまた一変した。道灌山で一度破れた特別の関係がまた違った形で結ばれることになった。

    十三

『ホトトギス』が余の手に渡ってから居士と余との関係
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