多いので極堂君はその続刊困難の事を時々《じじ》居士に洩らして来た。次の手紙は『子規書簡集』に載っているものであるが、前掲の手紙に対照して見ることの上に興味が多いので更にここに載せる事にする。
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拝啓おしつまり何かと御多忙と奉存《ぞんじたてまつり》候。
『ほととぎす』の事委細|御申越《おもうしこし》承知致候。編輯を他人に任すとのことはもとより小生の容喙《ようかい》すべきことにてもなく誰がやっても出来さえすれば宜しく候。ただ恐る三|鼠《そ》は粗漏にして任に堪えざるを。盲天《もうてん》寧ろ可ならんも盲目よく為し得べきや否や。
御申越によれば売先は予州にあらずして他国に在る由。これ最も可賀の事とうれしく存候。即ち予州は極めて僻在《へきざい》の地ながら俳句界の牛耳を取る証拠にしてこの事を聞く已来《いらい》猶更小生は『ほととぎす』を永続為致度念|熾《さかん》に起り申候。
編輯上最も面倒なるは募集句清書ならんと存候。せめてはこれだけにても御手を助けんと存、この度は小生清書致し俳巻に添置候。今後も出来さえすれば清書可致候。
しかしこの事は小生の奮発より成るものにて他人を
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