く後には多少不平なりき。しかし出来るだけは完美にしたいとは思う也。御勉強可被下候。壱円位の損耗ならば小生より差出してもよろしく候。
鳴雪翁のうれしさはあたかも情郎の情婦におけるが如く、親の子におけるが如くにて体裁も不体裁もなくただむやみやたらに嬉しき也。『ほととぎす』は翁の好意に向って感謝する処なかるべからず。
鳴雪翁は二号に「粛山公《しゅくざんこう》の句《く》」を送らるる由小生は「反古籠」を永く書くべし。
右大略批評まで如此候。以上。
[#ここで字下げ終わり]
一月二十一日[#地から3字上げ]子規
正之君
一号残り御贈り被下度鳴雪翁宛にてもよろし。
[#ここから3字下げ]
当地昨今厳寒
手|凍《こゞ》えてしば/\筆の落んとす
[#ここで字下げ終わり]
『ホトトギス』が松山で出ている間は余はあまり熱心なる投書家ではなかった。子規居士のみは「俳諧反古籠」を連載し募集句を選むこと等を怠らずやっていたが、鳴雪翁も何か家事上の都合で一時俳壇を退れた事などがあってどうも思う通りに原稿が集らなかったようであった。その上いつも経費が不足し意外に手数のかかる事が
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