矢張り沢山の人が来るこの郵便局は自然|斯《こ》うなくてはならないのであろう。それにバラック建という事が局員の気を軽くするところもあろう。
中央郵便局はやがて立派な建築をするということである。そうすれば東京駅頭に又美しい建物が一つふえるであろう。立派な建築が出来たらこんな風に無造作には行かなくなるかも知れぬ。併しわが愛する中央郵便局はどこまでもかく無造作にありたい。無造作にあるように窓口の建築をする事だ。
山中で凍死する集配人にも敬意を表するが、この中央郵便局員にも敬意を表する。
惜別
丸ビルのホトトギス発行所で社員が新しく出来て来た雑誌の発送をしていた。二、三人の俳人も来合せてその手伝いをしていた。そこへヒョコッと淋し気な顔を出した男がある。それは近々来るという事がわかっていたので、発行所のものや、その俳人達も暗に待っていたところのものであった。
その男も矢張り俳句を作る男で新潟の片田舎のものであった。それが商売の方が面白く行かないためか、外に理由があってか、今度ブラジルに移住することになったのである。もう近々渡航するという話であった。
「どうしたんだろう。ちっとも
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