丸の内
高浜虚子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)勘亭流《かんていりゅう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)軍艦|長門《ながと》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「酉+慍のつくり」、第3水準1−92−88]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)そろ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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    ドンが鳴ると

 震災ずっと以前のことであった。今はもう昔がたりになったが、あの小さい劇場の有楽座が建ったはじめに、表に勘亭流《かんていりゅう》の字で書かれた有楽座という小さい漆塗りの看板が掛っていたのに、私は奇異の眼をみはった事があった。この有楽座というのは、その頃はまだ珍しい純洋式の建築であった。どこを探しても和臭というものはなかったが、独《ひと》りこの勘亭流の字だけに従来の芝居の名残《なごり》をとどめていた。私は暫《しばら》くその勘亭流の字を眺めていたが、やがて心の中でこう思っ
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