対に忙殺されることがある。
 その中で俳句会を開くことがある。よく斯《こ》んなそう/″\しい所で俳句が作れるものだと怪しむ人があるが、なれるとそうも感じない。
 俳句会というと畳の上に座ってするものという習慣であったのが、いつの間にか椅子に腰掛けてするものになった。これはもう十年この方の事である。それに会社官庁のひけ時に集まって夕飯まで(二時間か三時間の間)に会を終るという事は、丸ビルにホトトギス発行所を置いた時からはじまったことである。
 ホトトギス発行所でも規定の四時までは事務を取っている。事務員が帰ってから、室の一隅に備えてある畳椅子を取り出し、総計で二十個程の椅子を並べ、この一室は忽《たちま》ち俳句会場に変る。
 鉄道協会とか、電気|倶楽部《クラブ》とかその他丸の内所在の建物で俳句会の催される時も、大概四時五時頃から七時頃までの間である。そうして何《いず》れもテーブルを囲んで椅子にもたれて作る。
 鉄道協会の俳句会の席上であったか会が終って多少余裕の時間のあった時の雑談に、
「ビルデングの最上層に能舞台を作って、そこで演奏し度いものですという事を観世喜之氏がいったことがあります
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