車口も降車口もそのはいり口が幾度か改造された。(これははいり口ではないが、山の手循環線が出来た時であったが、そのプラットホームに行く階段が作りかえられた。)はじめ自動車口と人力車口と歩行者口とが区分されたが、それは却《かえ》って不便なものであった。ついで露天にれん瓦《が》が敷かれた。その部分だけは自動車がちん入しないので危険が少なくなった。が、今度は自動車の客が、雨天の節は雨ざらしにならねばならなかった。そこでその敷かれたれん瓦の一部を掘起こして、柱を立てて、その上にガラス張りの屋根が設けられた。これで先ず一応は落著いたらしく思われた。
 が、この頃又乗車口の一部分のれん瓦を掘返して、何か工事をやっているのは何事であろう。聞く所によると、これは荘司が二十何万円とかを鉄道省に寄付して、そこの地下に理髪室浴場などを設けることになったのだという事である。
 やがて遠からぬうちに東京地下鉄道のステーションがこの東京駅の前に出来るのだとかいう事も聞いた。それも結構である。又この荘司の理髪店も結構である。併しそれ等よりも東京駅と丸ビルを連絡する地下道を作って、われ等をして安心して門から玄関に行き得
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