っていたんだい」
「英語さ」
私はますますおどろいた。
「じゃ、英語よめるんだネ」
「ああ、話すことだってできるよ」
私はとても不思議な気がして、林の顔を穴があくほどみた。そしてこの子が何でもない顔をしているんで、いよいよ不思議だった。
しかし林が英語が上手なのは真実だった。六年のとき、私達の学校を代表して、私と林は「郡連合小学児童学芸大会」にでたことがある。郡の小学校が何十か集って、代表児童たちが得意の算盤《そろばん》とか、書き方とか、唱歌とか、お話とかをして、一番よく出来た学校へ郡視学というえらい役人から褒状《ほうじょう》が渡されるのだった。そのとき私たちは、林が英語の本を読み、私が通訳するということであった。
読者諸君も、中学へあがられると、たぶん教わると思うが、ナショナルリーダーの三に「マンキィ、ブリッジ」(猿の橋)という課がある。手の長い猿共《さるども》が山から山へ、森から森へ遊びあるいて、ある豁川《たにがわ》にくると、何十匹の猿が手をつないで樹の枝からブラ下り、だんだん大きく揺れながら、むこうの崖にとびついて、それから他の猿どもを順々に渡してやるという話である。林は
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