く[#「こんにゃく」に傍点]売りについてくることもあった。そして、
「よし、こんどはおれにかつがせろよ」
と言って、代ってこんにゃく[#「こんにゃく」に傍点]桶《おけ》をかつぐこともあったが、かつぐのはやっぱり私が上手で、林は百メートルを歩くと、すぐ肩が痛いと言ってやめた。
しかし林が一緒にこんにゃく[#「こんにゃく」に傍点]売りについてきてくれるので、どんなに私は肩身がひろくなったろう。第一に林はこんにゃく[#「こんにゃく」に傍点]売りを軽蔑するどころか、却《かえ》って尊敬しているので、もうどんな意地悪共が、手を叩いてはやしたって、私はヘイチャラである。
「ハワイって、外国かい?」
一緒に歩きながら、私達はよくハワイの話をした。林のお父さんも、お母さんもまだそこで大きな商店をやってるということだった。
「アメリカさ、太平洋の真ン中にあるよ」
フーン、と私は返辞する。地図で習ったことを思いだすが、太平洋がどれくらい広くて、ハワイという島がどれくらい大きいのか想像つかないからだった。
「どうして日本に戻ってきたの?」
「日本語を勉強するためにさ」
「ヘェ、じゃハワイでは何語を教わ
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