ず、死んでから締って来て、喰い込んで来たのです。換言《はやくい》えば軽く頸に巻きつけて置いた手拭は、其儘で、頸の方が火膨れに膨れて、容積《かさ》が増したから、手拭が深く喰い込んだのです。創国時《はじめ》のアメリカ人が蛮民だ、人道の敵だと目の敵にして、滅して了ったアメリカ印度人《インデアン》は、其実、平和の土着民で白人こそ、侵略的で人道の敵だったのと同じことです。
 手拭は自宅の物で宜しい、咽ッ風邪で、咽喉が痛むから、有り合せの手拭を水で絞って、湿布繃帯をしたのでしょう」
「然しネ勝次郎が邪魔払いなり、保険金なりの為に絞め殺して、直に放火して、大急ぎで越前屋迄往って、何喰わぬ顔して居るとも考えられませんか」
「夫れは、考えは何《ど》の様にも出来るが、事実とシックリ合うか否かネ、次に時刻ということが大事の問題になりますネ」
 此時焼跡から帰って来た巡査部長が白い布《きれ》の上に拡げた焼け残りのガラクタの中に、歪《ひず》んだ、吸入器の破片があった。
「想像ですが、喧嘩をして夫は飛出す。熱はある、咽はいたむ。湿布をまいて吸入をかけて居ながら色々思い廻して見ると口惜しく心細くなって来る。昔の癪、
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