日の解剖では、多分、血液《ち》は鮮かな紅色で凝固る性質を失って居る上に、一番素人にも判るのは、肺の中に煤を吸い込んで居る[#「肺の中に煤を吸い込んで居る」に傍点]だろうと思います」
黙って聴いて居た署長は腹の中では、セセラ笑った。本草の通り代脉喋舌るなり[#「本草の通り代脉喋舌るなり」に傍点]、何がァ、本に書いてある通りに事実が出遇って呉れるなら世話は無い。第一、シャーロック・ホームズ見たいにお話をされるのが癪《しゃく》に障《さわ》って溜らぬ。
「確かに自宅で使用《つか》って居る手拭で頸を強く締めて深く喰い込んで居ても、未だ他殺で無いと言われますか」
確かに痛い所へ命中《こた》えたろうと見ると、検事は案外平気な顔で、
「私は、確かに自宅で使ってる手拭だ[#「自宅で使ってる手拭だ」に傍点]と判ってるので安心したのです。之が他家《よそ》のでは又別に考え直さなけりゃなりません。
あの手拭が頸に纏《まと》い就いてる有様《ようす》を巨細《よく》視て下さい。あの手拭は交叉して括っては無い[#「交叉して括っては無い」に傍点]。端からグルグル巻き付けた形になってます。活《い》きてる内は締まって居
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