イエ、小生《わたし》は他殺でもなく自殺でも無い[#「他殺でもなく自殺でも無い」に傍点]、変死と思います、過失の為の火傷死でしょう。
小生の左様《そう》考える訳は、屍体は煤や灰で、ひどく汚れて居るが、之を綺麗に払拭《はら》って視ると、肌の色が、屍体と思われないほど、鮮紅色《あかみ》がかって紅光灼々《つやつや》として居ることだ。
色合の佳い屍体を視たら、先ずチャン化合物中毒か、一酸化炭素中毒を考えろと、法医学は教えて居ます。烟にまかれて死ぬのは、不完全燃焼で出来る一酸化炭素を、肺に吸込んで[#「肺に吸込んで」に傍点]其中毒で死ぬので、已《すで》に呼吸《いき》の無い屍体を、烟や火の中に抛り込んでも、此中毒は起しません。
尚《また》、其外に、俯向《うつむけ》になって居る上面、即ち背中や腰の部分に、火傷で剥《む》けた所がありますネ、其地肌に暗褐色の網目形が見えます。之は小血管に血が充ちた儘で焼け固まった[#「血が充ちた儘で焼け固まった」に傍点]結果です、屍体の焼けたのでは、血の下方《した》に降沈《さが》った面には、有りますが、上ッ面には生《で》きない相です。
私の推察が当ってるとすれば明
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