おくんなせい
拝むから 旦那 癒してやっておくんなせい 旦那
基督は悲しいお顔をなさった
そしてその男のからだへさわって
よし さあ潔《きよ》くなれ
とお言いになると
見ているまに癩病が癒った
花
おとなしくして居《い》ると
花花が咲くのねって 桃子が言う
冬
木に眼《め》が生《な》って人を見ている
不思議《ふしぎ》
こころが美しくなると
そこいらが
明るく かるげになってくる
どんな不思議がうまれても
おどろかないとおもえてくる
はやく
不思議がうまれればいいなあとおもえてくる
人形
ねころんでいたらば
うまのりになっていた桃子が
そっとせなかへ人形をのせていってしまった
うたをうたいながらあっちへいってしまった
そのささやかな人形のおもみがうれしくて
はらばいになったまま
胸をふくらませてみたりつぼめたりしていた
美しくあるく
こどもが
せっせっ せっせっ とあるく
すこしきたならしくあるく
そのくせ
ときどきちらっとうつくしくなる
悲しみ
かなしみと
わたしと
足をからませて たどたどとゆく
草をむしる
草をむしれば
あたりが かるくなってくる
わたし
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