りを

  悩ましき 外景

すとうぶを みつめてあれば
すとうぶをたたき切つてみたくなる

ぐわらぐわらとたぎる
この すとうぶの 怪! 寂!

  ほそい がらす

ほそい
がらすが
ぴいん と
われました

  葉

葉よ、
しんしん と
冬日がむしばんでゆく、
おまへも
葉と 現ずるまでは
いらいらと さぶしかつたらうな
葉よ、
葉と 現じたる
この日 おまへの 崇厳

でも、葉よ
いままでは さぶしかつたらうな

  彫られた 空

彫られた 空の しづけさ
無辺際の ちからづよい その木地に
ひたり! と あてられたる
さやかにも 一刀の跡

  しづけさ

ある日
もえさかる ほのほに みいでし
きわまりも あらぬ しづけさ

ある日
憎しみ もだえ
なげきと かなしみの おもわにみいでし
水の それのごとき 静けさ

  夾 竹 桃

おほぞらのもとに 死ぬる
はつ夏の こころ ああ ただひとり
きようちくとうの くれなゐが
はつなつのこころに しみてゆく

  おもひで

おもひでは 琥珀《オパール》の
ましづかに きれいなゆめ
さんらんとふる 嗟嘆《さたん》でさへ

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