秋の瞳
八木重吉
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     序

 私は、友が無くては、耐へられぬのです。しかし、私には、ありません。この貧しい詩を、これを、読んでくださる方の胸へ捧げます。そして、私を、あなたの友にしてください。


  息を 殺せ

息を ころせ
いきを ころせ
あかんぼが 空を みる
ああ 空を みる

  白 い 枝

白い 枝
ほそく 痛い 枝
わたしのこころに
白い えだ

  哀しみの 火矢《ひや》

はつあきの よるを つらぬく
かなしみの 火矢こそするどく
わづかに 銀色にひらめいてつんざいてゆく
それにいくらのせようと あせつたとて
この わたしのおもたいこころだもの
ああ どうして
そんな うれしいことが できるだらうか

  朗《ほが》らかな 日

いづくにか
ものの
落つる ごとし
音も なく
しきりにも おつらし

  フヱアリの 国

夕ぐれ
夏のしげみを ゆくひとこそ
しづかなる しげみの
はるかなる奥に フヱアリの 国をかんずる

  おほぞらの こころ

わたしよ わたしよ
白鳥となり
らんらんと 透きとほつて
おほぞらを かけり
おほぞらの うるわしいこころ
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