こころのなかに 花がさいた

  白い 雲

秋の いちじるしさは
空の 碧《みどり》を つんざいて 横にながれた白い雲だ
なにを かたつてゐるのか
それはわからないが、
りんりんと かなしい しづかな雲だ

  白い 路

白い 路
まつすぐな 杉
わたしが のぼる、
いつまでも のぼりたいなあ

  感 傷

赤い 松の幹は 感傷

  沼 と 風

おもたい
沼ですよ
しづかな
かぜ ですよ

  毛蟲 を うづめる

まひる
けむし を 土にうづめる

  春 も 晩く

春も おそく
どこともないが
大空に 水が わくのか

水が ながれるのか
なんとはなく
まともにはみられぬ こころだ

大空に わくのは
おもたい水なのか

  お も ひ

かへるべきである ともおもわれる

  秋の 壁

白き 
秋の 壁に
かれ枝もて
えがけば

かれ枝より
しづかなる
ひびき ながるるなり

  郷 愁

このひごろ
あまりには
ひとを 憎まず
すきとほりゆく
郷愁
ひえびえと ながる

  ひとつの ながれ

ひとつの
ながれ
あるごとし、
いづくにか 空にかかりてか
る、る、と
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