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うつくしい 秋のゆふぐれ
恋人の 白い 横顔《プロフアイル》―キーツ[*「キーツ」に傍線]の 幻《まぼろし》

  はらへたまつてゆく かなしみ

かなしみは しづかに たまつてくる
しみじみと そして なみなみと
たまりたまつてくる わたしの かなしみは
ひそかに だが つよく 透きとほつて ゆく

こうして わたしは 痴人のごとく
さいげんもなく かなしみを たべてゐる
いづくへとても ゆくところもないゆえ
のこりなく かなしみは はらへたまつてゆく

  怒《いか》れる 相《すがた》

空が 怒つてゐる
木が 怒つてゐる
みよ! 微笑《ほほえみ》が いかつてゐるではないか
寂寥、憂愁、哄笑、愛慾、
ひとつとして 怒つてをらぬものがあるか

ああ 風景よ、いかれる すがたよ、
なにを そんなに待ちくたびれてゐるのか
大地から生まれいづる者を待つのか
雲に乗つてくる人を ぎよう[*「ぎよう」に傍点]望して止まないのか

  かすかな 像《イメヱジ》

山へゆけない日 よく晴れた日
むねに わく
かすかな 像《イメヱジ》

  秋の日の こころ

花が 咲いた
秋の日の

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