なびくとき
あれほどおもたい わたしの こころでさへ
なんとはなしに さらさらとながされてゆく

  不思議をおもふ

たちまち この雑草の庭に ニンフが舞ひ
ヱンゼルの羽音が きわめてしづかにながれたとて
七宝荘厳の天の蓮華が 咲きいでたとて
わたしのこころは おどろかない、
倦み つかれ さまよへる こころ
あへぎ もとめ もだへるこころ
ふしぎであらうとも うつくしく咲きいづるなら
ひたすらに わたしも 舞ひたい

  あをい 水のかげ

たかい丘にのぼれば
内海《ないかい》の水のかげが あをい
わたしのこころは はてしなく くづをれ
かなしくて かなしくて たえられない

  人 間

巨人が 生まれたならば
人間を みいんな 植物にしてしまうにちがいない

  皎々とのぼつてゆきたい

それが ことによくすみわたつた日であるならば
そして君のこころが あまりにもつよく
説きがたく 消しがたく かなしさにうづく日なら
君は この阪路《さかみち》をいつまでものぼりつめて
あの丘よりも もつともつとたかく
皎々と のぼつてゆきたいとは おもわないか

  キーツ[*「キーツ」に傍線
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