の あさがほの 実
さぶしいだらうな、実よ

あ おまへは わたしぢやなかつたのかえ

  暗 光

ちさい 童女が
ぬかるみばたで くびをまわす
灰色の
午后の 暗光

  止まつた ウオツチ

止まつた 懐中時計《ウオツチ》、
ほそい 三つの 針、
白い 夜だのに
丸いかほの おまへの うつろ、
うごけ うごけ
うごかぬ おまへがこわい

  鳩が飛ぶ

あき空を はとが とぶ、
それでよい
それで いいのだ

  草に すわる

わたしの まちがひだつた
わたしのまちがひだつた
こうして 草にすわれば それがわかる

  夜の 空の くらげ

くらげ くらげ
くものかかつた 思ひきつた よるの月

  虹

この虹をみる わたしと ちさい妻、
やすやすと この虹を讃めうる
わたしら二人 けふのさひわひのおほいさ

  秋

秋が くると いふのか
なにものとも しれぬけれど
すこしづつ そして わづかにいろづいてゆく、
わたしのこころが
それよりも もつとひろいもののなかへくづれて ゆくのか

  黎 明

れいめいは さんざめいて ながれてゆく
やなぎのえだが さらりさらりと 
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