ながるらしき

  宇宙の 良心

宇宙の良心―耶蘇

  空 と 光

彫《きざ》まれたる
空よ
光よ

  おもひなき 哀しさ

はるの日の
わづかに わづかに霧《き》れるよくはれし野をあゆむ
ああ おもひなき かなしさよ

  ゆくはるの 宵

このよひは ゆくはるのよひ
かなしげな はるのめがみは
くさぶえを やさしき唇《くち》へ
しつかと おさへ うなだれてゐる

  しづかなる ながれ

せつに せつに
ねがへども けふ水を みえねば
なぐさまぬ こころおどりて
はるのそらに
しづかなる ながれを かんずる

  ちいさい ふくろ

これは ちいさい ふくろ
ねんねこ おんぶのとき
せなかに たらす 赤いふくろ
まつしろな 絹のひもがついてゐます
けさは
しなやかな 秋
ごらんなさい
机のうへに 金糸のぬいとりもはいつた 赤いふくろがおいてある

  哭くな 児よ

なくな 児よ
哭くな 児よ
この ちちをみよ
なきもせぬ
わらひも せぬ わ

  怒 り

かの日の 怒り
ひとりの いきもののごとくあゆみきたる
ひかりある
くろき 珠のごとく うしろよりせまつてくる


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