だま
ぴらる ぴらる
ゆうらめく むねの 妖玉
さなり さなり
死も なぐさまぬ
らんらんと むしばむ いのり
哀しみの 秋
わが 哀しみの 秋に似たるは
みにくき まなこ病む 四十女の
べつとりと いやにながい あご
昨夜みた夢、このじぶんに
『腹切れ』と
刀つきつけし 西郷隆盛の顔
猫の奴めが よるのまに
わが 庭すみに へどしてゆきし
白魚《しらうを》の なまぬるき 銀のひかり
静かな 焔
各《ひと》つの 木に
各《ひと》つの 影
木 は
しづかな ほのほ
石塊《いしくれ》と 語る
石くれと かたる
わがこころ
かなしむべかり
むなしきと かたる、
かくて 厭くなき
わが こころ
しづかに いかる
大木《たいぼく》 を たたく
ふがいなさに ふがいなさに
大木をたたくのだ、
なんにも わかりやしない ああ
このわたしの いやに安物のぎやまんみたいな
『真理よ 出てこいよ
出てきてくれよ』
わたしは 木を たたくのだ
わたしは さびしいなあ
稲 妻
くらい よる、
ひとりで 稲妻をみた
そして いそいで ペンをとつた
わたしのうちにも
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