桙ノ、彼等は可笑しな体躯《からだ》をば、
彼等の椅子の、黒い大きい骨組に接木《つぎき》したのでありました。
枉がつた木杭さながらの彼等の足は、夜《よる》となく
昼となく組み合はされてはをりまする!

これら老爺《ぢぢい》は何時もかも、椅子に腰掛け編物し、
強い日射しがチクチクと皮膚を刺すのを感じます、
そんな時、雪が硝子にしぼむよな、彼等のお眼《めめ》は
蟇《ひきがへる》の、いたはし顫動《ふるへ》にふるひます。

さてその椅子は、彼等に甚だ親切で、褐《かち》に燻《いぶ》され、
詰藁は、彼等のお尻の形《かた》なりになつてゐるのでございます。
甞て照らせし日輪は、甞ての日、その尖に穀粒さやぎし詰藁の
中にくるまり今も猶、燃《とも》つてゐるのでございます。

さて奴等、膝を立て、元気盛んなピアニスト?
十《じふ》の指《および》は椅子の下、ぱたりぱたりと弾《たた》きますれば、
かなし船唄ひたひたと、聞こえ来るよな思ひにて、
さてこそ奴等の頭《おつむり》は、恋々として横に揺れ。

さればこそ、奴等をば、起《た》たさうなぞとは思ひめさるな……
それこそは、横面《よこづら》はられた猫のやう、唸りを発
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